「このプロジェクトは成功させなければならない」
これは社是として強く言い渡されていた。
もしかしたら失敗するかもしれない。
完成しても利益にならないかもしれない。
誰もがそのような不安を心に抱いていたが、それを口にすることは決して許されなかった。
「間違えるのはかまわないが、不確かなのはだめだ」(第6章)
人間は誰しも失敗するから、失敗することは仕方が無い。
しかし、「失敗するかもしれない」はダメだ。
失敗する可能性など微塵も考えてはならない。
ただただ、成功だけを目指し、不退転の覚悟を以て一心不乱に取り組まなければならない。
誰もがプロジェクトが失敗する未来を予期していた。
しかし、皆はその可能性については口にせず、従順かつ黙々と勤勉に作業に従事した。
そして予定の工期が来てもシステムは完成せず、更に一ヵ月、二ヵ月が経過してもシステムが完成することは無く……。
更に三ヵ月、四ヵ月と何事も無く静かに月日は流れ……、そして会社の資金が無くなると共にプロジェクトは社会から退場した。
熊とワルツを トム・デマルコ
0 件のコメント:
コメントを投稿